東雲あるての雑記録

脳内洗浄作業

些細だけど衝撃的だった、俺が筋トレを始めたきっかけ

俺が筋トレをするのには、医者から筋肉を少しでも付けた方がグリコーゲンの貯蔵量が増えて疲れにくくなると言われたからとか、テストステロン氏の本を読んで人生の悩みの99%は筋トレで解決できると確信したからとかいう最もらしい理由もあるけれど、実際に自重トレという筋トレの最初の扉をそっと開ける気になったきっかけはもっと他愛のない、それでいて俺にとっては衝撃的なことだった。

 

街を歩いていて、鏡がわりになるような大きなガラスウィンドウがあったら、自分の姿を確認するだろうか?俺はする。
チラとも見ないのは、よほど自分に自信があり、かつナルシストではない人間、つまり大谷翔平くらいのものではないかと思う。
俺は特に自分の姿勢が悪いと思っているので、いつも見てしまう。
男性は骨盤が後傾するタイプが多いはずなのだが、俺は前傾気味でそれが気になって仕方ないのだ。
俺が大のドナルドダック好きであれば、「いいねぇ、この腰と腹のライン。グワッ!グワッ!」と悦に入るかもしれないが、そんなことはなく「うーむ、やはり前傾気味だよなぁ。ストレッチが足りないのか?」などと悩む。

 

この日も俺は、いつものように会社へ向かって歩いていた。
コンビニ手前のビルに差し掛かったとき、いつものように大きなガラスウィンドウにうつった自分の姿をチェックする。
その時の一番の目安となるのが、ベルトの角度だ。
立ち姿がスッとしている人というのは、立っていても歩いていても、ベルトが地面とほぼ平行の角度を保って装着されている。
俺の場合は、ベルトが少しおじぎをしているかのように、前に傾いている。
骨盤が前傾しているのだ。
そのビルを通り過ぎる毎日恒例の十数秒間は、いつも通り終わるはずだった。
何気なく、ベルトと同時に腹を触るまでは。


なぜこの時まで気付かなかったのかは本当に不思議で仕方ない。
我が家に流れるテレビ番組にだけサブリミナル映像が含まれているとか、電磁波によって発生させた磁場の作用で、一定地域の人々の精神活動に影響を及ぼす調査プログラムの一環に知らず知らずのうちに組み込まれていたとしか思えないくらいに、まったく思いもよらなかった。
しかし幸か不幸か、俺は見たくないものは見ないマインドコントロールから目覚め、気づいたのだ。

 

下っ腹が出ていることに。

 

衝撃だった。
骨盤の前傾に加えて下っ腹が出てきているので、相乗効果で見た目が強調されてしまうのだ。
お互いがお互いに引き出さなくてよい魅力を引き出そうと頑張ってしまっている。
からしたら、出てるってほどではない、かもしれない。
だが、俺からしたら腹が出ていないというのは、地面と垂直、イコール90度の絶壁ということだ。
ロッククライミングボルダリングで少しでもオーバーハングしている壁は垂直の壁とは大違いと聞く。
そういうことなのだ。

例えば、俺の身体を模した巨大な人型を登っていくSASUKEのコースがあったとする。

さあ、少し巻き爪気味の親指からコースインした山田!
ハイアーチによる甲高の山を登っていく!
そして足首はグラグラと不安定だから気を付けてほしい!
幼少期の捻挫からくる不安定足首ゾーンを抜けた山田、ロープに飛びついた!
さぁここからは毛を模した無数のロープをつたいながら登っていくすね毛の壁だ!
怒涛の勢いですね毛からすね毛へ、もといロープからロープへ渡りながら登っていく!
そのまま膝を超えて太ももの皮をつかみながら登っていく!

さあ、そして現れるのはコース最大の難所!
反り返る下っ腹だぁ~~~~!

さぁ、山田、このオーバーハングした下っ腹に取り付いた!
まるで今ラーメン3杯食べ終わったばかりと言わんばかりのこの下っ腹にへばりつき、必死に重力に抗っている山田!
苦しいか!非常に辛そうだ!鍛え抜かれた筋骨隆々の山田!浪花のターミネーターの異名も持つ男が!運動不足の見本のような男の下っ腹を超えられない!ここを踏ん張ってへそのくぼみの中間ゾーンまでたどり着けるか!厳しいか、苦しそうだ!
腕が震える!
あー--!落ちたー!
山田、落ちてしまったー!
ここでリタイアー!

 

というわけで。人に何と言われようが、俺にとってはこの下っ腹は、SASUKE最難関エリアくらいの衝撃だったわけで。

山田さんが「俺にはSASUKEしかないんです・・・」と泣いたくらいに打ち込めるものが、俺にも見つかれば良いなと思いながら今日も筋トレをするのだ。(なお、挑戦者のモデルはミスターSASUKE、人生SASUKEの山田勝己さんにお願いした)


悪魔的○○

あいつは悪魔のような男だな、とは言われたくないが、悪魔的になりたい。
ローソンで売っている「悪魔のおにぎり」が「悪魔的うまさ」とうたっているだろう。
悪魔的になりたいとは、つまりそういうことだ。
あいつの〇〇は悪魔的だなと言われるような何かが欲しいのである。

俺は至って平凡な人間である。
小学生の時からずっと背の順では真ん中か、それより少し前。
徒競走でも持久走でも平均的タイム。
野球部では強豪中学でも弱小高校でも万年補欠だった。
勉強も可もなく不可もなく、といっても数学は絶望的に出来なかったので文系の三流大学に入った。
容姿もまた人並である。
とにかくすべて、THE平均て感じで、人より得意だなぁ、とか、これは自分に向いているぞ、ということに出会ったことがまずない。

なので、俺にも何か悪魔的〇〇があればいいのに、と妄想するのだ。
そういう事情であれば、悪魔とか天使とか関係なく、単純に〇〇の才能があればなぁ、で良いではないか、と思うかもしれない。
そうと言えばそうなのだが、才能は生まれた瞬間から決まっているのに対し、悪魔的〇〇ならば今からでも手に入れられるかもしれないではないか。
悪魔と契約すれば。

アメリカの伝説的ブルース・ミュージシャンのロバート・ジョンソンは、悪魔に魂を売り渡すのと引き換えに驚異的なギターテクニックと歌を身につけた。
ミシシッピ州クラークスデイルの49号線と61号線の交差点でのことだ。
そして、悪魔との取引が真実であったと証明するかのように27歳で毒殺されるのだ。

ということで、悪魔と契約すれば、今からでも俺も物凄い何かを身につけられるかもしれない。
しかし、すでに30代後半の俺に、ロバート・ジョンソンばりの契約は無理だ。
ミュージシャンというのはいつの時代も人気も需要もあるものだ。
俺も音楽は大好きだが、需要があるほど、悪魔の方も吹っ掛けてくるだろう。

なるべく欲張らずにいかないといけないが、とりあえずは仕事関係から考えてみよう。
・悪魔的営業力
・悪魔的事務処理能力
これがあれば、どんな会社でも重宝されるだろうし、給料だって思いのままだ。
何せ悪魔的なんだから、日本一くらいの売り上げは軽いだろう。
しかし実績がないところからのスタートなので、恩恵を受けるまで時間がかかりそうだ。頑張って実績を作って超高給の外資系企業に転職しようと思った矢先に代償として殺されてしまいそうだ。というか悪魔的営業力はあっても英語力はないので外資系には入れないかもしれない。

もっと代償が小さい、つまり需要がなさそうで、かつ会社で役立ちそうな能力はないか。
・悪魔的太鼓持ち
これなら先ほどより需要はなさそうだし、すぐには殺されないだろう。
めちゃくちゃに太鼓持ちが上手いということは、めちゃくちゃに上司、役員、社長に気に入られる。給料もアップする。
一番のメリットは悪魔的に太鼓持ちが上手いので、太鼓持ちされている本人は勿論のこと、他の社員も太鼓持ちに気付かないということだ。
だから、妬みも軽蔑も受けない。
問題は自分の能力、職務は変わらないのに、待遇だけが異常に良くなることに精神的に耐えられるかだ。
もともと自己肯定感の低い俺には無理だろう。

もう少し、日々の悩みに目を向けた方が良いかもしれない。
・悪魔的に良く声が通る
自分では普通に話してるつもりなのだが、よく聞き返される。
もし声が通るようになったら、上司の悪口には十分注意せねばならない。
今の上司に不満はないが、今後どうなるかは分からない。
以前に部長と口論になり、口くせぇ~んだよ!と捨て台詞を残して辞めていったヤツがいたが、そんな度胸は俺にはない。
(口がくせぇとは皆が思っていた)

次の候補を考える。
・悪魔的寝つきの良さ
・悪魔的寝起きの良さ
これはいい。病気になってからというもの、人間、健康が一番の宝物だと感じている。ところが、健康そのものを願ってしまうと悪魔的健康などというワケわからんパワーワードが誕生するだけでなく代償がとてつもなくデカくて実際にはすぐ死ぬという本末転倒な結果が目に見える。
その点、健康に大事な食事・睡眠・運動の三大要素の中で一番即効性のある睡眠に寄与する力は良い目の付け所だ。
俺は寝つきも寝起きも悪い。どちらかを選ぶなら、朝はとにかく気合で頑張るとして、寝つきを良くした方が体調には良いかもしれない。
寝る直前までスマホを見ていても、昼寝しようとした時に選挙カーが大音量で走っても、すぐに眠りの中だ。
ただ、この程度だと何だか自分で努力した方が良いのではないかという気もする。

父親を悪魔と契約させるという手もある。
・悪魔的に寝言が面白い父親
これなら、寝言がうるさく感じないどころか、早く寝言を言ってほしいと心待ちにするかもしれない。深夜ラジオのごとく。
いかん、それではやはり寝不足になってしまう。
録音しておいて、通勤時間に聞くことにしよう。

しかしやはり本命は自分だ。
料理がまったくできないので、そちら方面の可能性も検討の価値ありだ。
しかし、悪魔的に料理がうまい、だとこれまた代償が計り知れない。
いかに限定的にするかが肝だ。
・悪魔的に焼き物だけうまい
日本料理なら焼き物だけ担当する焼き場があるので、焼き物限定でも相当な評価を得られるだろう。ということは代償もデカい。煮物でもスープでも同じ。デザートならパティシエがある。フランス料理だってたいがい分業制だ。

もっと絞り込まねばなるまい。
・悪魔的千切り
これならどうだ。千切りだけが悪魔的にうまい。
ふつうであれば、千切りだけで雇ってくれる店などないだろう。
しかし何せ悪魔的なので何とかなるだろう。
トンカツ屋を渡り歩きながら、全国を放浪して気ままに暮らすのだ。

ガラッ
「おっちゃん、ここで働かせてほしいんだ!」
「何だ坊主、やぶからぼうに。皿洗いなら間に合ってるよ。」
「俺、千切りが得意なんだ!千切りなら誰にも負けないよ!」
「ハッハッハ!トンカツ屋の千切りキャベツは時にトンカツと同じくらいに店の顔になるんだ。帰ってくれ。」
「そう言わずに一口だけでいいから食べてみてくれよ!」
タタタタタッタタッタタッタン タタタトントトトトッ

「むむっ?なんだ?!この流れるような包丁さばきは・・・しかも・・・」
「包丁の音がメロディを奏でている・・・??」
「こ、これは亡くなったお袋がよく歌ってくれた・・・」
「何でか知らねぇけど、俺の千切りは食べる前から感動するらしいんだよね!」
トトトトトッ タン
「ま、食べてみてよ!」
パク、シャクシャク・・・
フラッ・・・・・
「・・・は??いかん、あまりの美味さに気を失いかけてしまったようだ・・・」
「なんだこの千切りは・・・たった今収穫されたかのような瑞々しさと気持ちよいシャキシャキ感、それでいてキャベツの甘味とともに口の中でとけるように消えていく滑らかさ・・・」
「今晩から頼むぜ坊主!」
次回、
千切り職人 万細人 第二話「北からの刺客!スライサー使いの直億也!」
『俺の千切りは桁を超えるぜ!!来週もみてくれよなっ!』
なお、千切りの千は数字ではなく、細いを意味する繊からくる・・・

それはそれとして、トンカツ屋を渡り歩き、夏は暑いから北へ、冬は南へと気ままに旅をするというのは良いかもしれない。
トンカツ屋は全国にありそうだしな。
それに飽きたら東京へ戻り、稼いだ金で千切り専門店を開くのだ。

うん、とりあえず千切りの練習をしてみよう。
ミシシッピへの渡航準備をしている間に、千切りこそ俺に与えられた唯一の才能だったのだと判明するかもしれないし。

友達0人の俺はポールと友達になりたい

友達がいない。
スマホの機種変をしてから電話帳には親、会社、通っているカイロプラクティックの3件しか登録せずに1年半過ぎたが、それ以外の番号は1度も使ってないし、かかってもこない。
ラインにしても高校時代の部活仲間とはつながっているが、慶事弔事以外に連絡がきたことはまずない。
ラインの通知がきて、誰だろうと少し期待して確認してもニュースや公式アカウントのお知らせしかないことが分かったので、もはや確認もしない。通知が数十件たまってから、まとめて既読にするだけだ。

念のため書いておくと、結婚もしていない。
彼女がいたことも、ここ12年ない。
今、自分で数えて驚愕した。
ここ1~2年、ではなく、ここ12(ジュウニ)年、だ。
以前、彼女いない歴6年くらいの先輩に、それヤバくないですか?と言っていた過去の俺へ。軽くダブルスコア達成してるぞ。

さて、とにかく友達も彼女もいない自分は、友達か彼女がいたら日々の生活にもう少し潤いが出るのではないか、と思ったのだ。

しかし、まだコロナ禍といえる世の中で、ビビりの俺はアクティブに動き回る勇気がない。
そもそもコロナ禍とか関係なく、アクティブに動き回るバイタリティがあれば、ビフォアーコロナの世界線でもう少し違った結果が出ていただろう。
買い物に行った電気店で目当ての品が見つからず、忙しそうな店員を遠目に眺めながら疲れ果てて何も買わずに帰る、といったこともなかったろう。
マッチングアプリ的なものを使う、ということも考えられるが、ビビりの俺はサクラを見分ける自信がない。
サクラなら気を持たされた挙句にバイバイ、程度で済むかもしれないが、壺や絵画を売りつけられたり、急に彼女の親が難病にかかったり、急に彼女が貯めていた留学費用やらがなくなるかもしれない。
好きになってしまってからでは遅い。そもそもコロry
これも却下。

対象を人間に限定するから難しいのではないか。
恋人というとアレだが、友達が欲しければ、ミミズだってオケラだってアメンボだってみんな友達になりうるはずだ。
今は亡き、やなせたかし先生もそうおっしゃっている。

友達候補が動物でオーケーとなると、だいぶ現実味を帯びてきた気がする。保護犬、保護猫を迎えるというのは想像しやすい。
なんなら、ペットショップで購入しても良い。
友達を金で買うというのはいかがなものか、という気もするが、金で友達を売るよりはよっぽどマシではないか。
金で買ったあとに金では買えない友情を築けばよい。

猫はいい。昔は犬派だったが、数年前からyoutubeで見たりしてすっかり猫好きになった。犬よりも人間味があるし、クールなようで情もあると思う。
飼い主がパソコン作業してると必ず邪魔してきたりするが、でも飼い主は邪険にしない関係にも憧れる。足でオモチャを蹴り蹴りする仕草も可愛い。たくさん動画をみた。なぜyoutubeで猫を見るかというと、俺は喘息なので猫カフェに行けないからだ。
ん?・・・俺は喘息なので猫カフェに行けない・・・
猫カフェに行けないのに飼えるわけがない。
却下。

モフモフした友達には憧れるが、さらなる発想の転換が必要だ。
困った時には偉大なる先人たちの言葉を参考にするというのは定石だ。
友について語った偉大なる先人・・・。

ボールは友達

偉大なるサッカー選手、大空翼の言葉である。

これこそ、まさにコペルニクス的転回。いや転回はしてない。でも物凄く広がった。
友達=有機物という無意識下の制約をとっぱらい、生きとし生けるものすべて、なんぞという形容が広大な砂漠の中の砂一粒をすりこぎで入念にすり潰したあとの粉くらいちっぽけに感じるほど、ありとあらゆるものへの友情の可能性に満ち満ちている。

だがしかし、やはり友になるというからには、その友とよく関わりコミュニケートすることが不可欠であろう。
ボールだって、翼くんが練習の時以外にも常にいっしょにいてくれるから、翼くんの友情を感じることができる。部屋の隅に置きっぱなしで、ボールは友達、と言われたってボールの方だって「はぁ?」って感じだろう。

とすると、友達候補は少なくとも俺が毎日使い、壊れる可能性が低いもの。
機械のように複雑ではダメでシンプルな構造のものが良い。
そして俺が感謝できたりリスペクトできると良い。
なるべく身体で触れ合えると友情も育みやすいだろう。

以上のような条件から友達候補ナンバーワンとして俺が「お願いします!」と申し出たのは彼(もしくは彼女)だ。

ストレッチポール。

寝るときには、彼(もしくは彼女)の上に仰向けになると気持ちよく俺の身体をほぐしてくれ、知らないうちに眠りに落ちている。
気づくと彼(もしくは彼女)を抱きしめていることも良くあるので、恋に発展しないかが少し気がかりだ。俺の方にその気はない。あくまで友達として、だ。